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ラッパーZeebraさんの名曲とパンチライン（傑作フレーズ）１０選を紹介。「俺は東京生まれ…」

秋野北郎 5月 28, 2020 19,150件のコメント Zeebra エンタメ

49歳にして初孫誕生で「おじいちゃん」になったことでも話題のラッパーZeebra（ジブラ）さんは、日本のヒップホップ界を牽引してきた存在だ。最近は人気番組「フリースタイルダンジョン」の司会として存在感が強く、若い世代には単に業界の大物という認識が強いかもしれない。しかし実はその番組名も、Zeebraさんの名曲から生まれたフレーズだということをご存知だろうか。なまじ知名度があるばかりに、SNSなどでの直言が炎上したり、誤解を受けたりもしているようだが、彼の輝かしいキャリアを知るオールドファンからすると”ご愛嬌”といった風情もある。

　どうあれ、音楽的足跡を振り返ってみれば、彼は疑いなく「生きる伝説」と言えるだろう。日本社会にとってどんどんとラップが普通のものになってきた昨今のことを思うと、将来的には音楽の教科書に載りかねない人物・・・もはやそんな存在なのだ。

　……じゃあ、そのZeebraさんって、どんなラップしてきたんだっけ？
　スゴいスゴいって言うけど、一体何がスゴいのだろう？　
　
　というわけで、この記事ではZeebraさんが25年におよぶキャリアの中で発表してきた名曲とパンチライン（名フレーズ）10選を紹介する。Zeebraさんや日本語ラップへの関心の入り口、またその音楽的功績の再確認の一助になれば。

　※著作権に配慮し、動画は貼っていないのですがご了承ください。

1. Grateful days　
2. Street Dreams　
3. 口から出まかせ
4. Mr. Dynamite
5．公開処刑
6. 証言
7. Parteechecka
8. I’m Still No.1
9. Baby girl
10. Neva Enuff

1. Grateful days　

　1999年発売、ミクスチャーバンドDragon Ashの楽曲にZeebraさんが参加したシングル曲。オリコンチャート１位の大ヒットになった。まずは、なんといってもZeebraさんを有名にしたのがこのパンチラインだ。

　俺は東京生まれHIPHOP育ち
　悪そうな奴は大体友達
Greatful Days – Dragon Ash feat. Zeebraより引用

　最初のバースではDragon Ashのkjがラップし、サビを挟んで2バース目の冒頭に出てくるのがZeebraさんのこのフレーズ。おそらくいまだに、日本語ラップで最もよく知られたフレーズでもある。自分がどんな人間で、何をバックボーンにしていて、どんな価値観なのか、そういったストーリーを簡潔に世間に向けて伝えている、魔力のある一節だ。日本における現在のHIPHOPの一般的イメージを決定づけた伝説の名曲、名ライン。

2. Street Dreams　

　2005年に発売され、現在ではZeebraさんの代表作との呼び声も高い名曲。日本にHIPHOPを定着させてきたとの自負を込めて自身のストーリーを語る歌詞で、気合の入った内容になっている。このサビのフレーズが印象的だ。

　俺がNo.1ヒップホップドリーム
　不可能を可能にした日本人
Street Dreams – Zeebraより引用

　「ヒップホップ」と「日本人」でストレートに韻を踏んでいるのが、なんとも粋な感じがする。一度聞いたら忘れられない、運命的な響きを感じるサビだ。

3. 口から出まかせ

　1995年のライムスターのアルバム「エゴトピア」収録の曲。Zeebraさんが在籍するグループ「キングギドラ」として参加。このパンチラインは時を経て・・・。

フリースタイルダンジョン抜けて参上
口から出まかせ – ライムスター feat.キングギドラ、ソウルスクリームより引用

　人気テレビ番組の名前の由来にもなったのがこの一節だ。ちなみにこのラインをZeebraさんが自らサンプリングした「フリースタイルダンジョン」という曲もある。

4. Mr. Dynamite

　2002年のヒットしたシングル。ゴリゴリのダミ声で「一点突破　いくぜヒップホッパー」と繰り返すサビも強烈だが、バース中にはZeebraさんの自己紹介定番フレーズが登場する。

　俺がZeebra ド派手なハスラー

　親父が言ってたぜ弱音は吐くな
Mr. Dynamite – Zeebraより引用

　家族を大切にするZeebraさんらしいパンチライン。Zeebraさんが即興でラップする際などに頻繁に使うフレーズだ。「俺がジブラ　鼻息荒いシマウマ」などのパターンもある。

5．公開処刑

　2002年に、グループ「キングギドラ」の活動を再開させ、発売したアルバム「最終兵器」に収録。日本のHIPHOP史上、最も物議を醸した曲ではないだろうか。Zeebraさんのこのパンチラインが衝撃だ。

　覚悟決めんのはおめぇだ kj
公開処刑 – キングギドラより引用

　おめぇのグレイトフルデイズも今日まで
公開処刑 – キングギドラより引用

　名曲Greatful Daysの盟友Dragon Ashのボーカル、kjこと降谷健志さんを、名指しで痛烈にDISった（非難した）Zeebraさんのバース。自身のラップやスタイルを真似し続ける姿に「パクんなよ」と堪忍袋の緒が切れた、という主旨だった。
　元々コラボした相手でもあり、人気バンドだったDragon Ashに対するえげつないDISを商業音楽シーンの中で扱ったわけで、国内では前代未聞と言える事態だった。最高にスキャンダラスなこの曲は今でも人気があり、議論の的だ。

6. 証言

　1995年のLamp Eyeというグループ名義のシングル曲。日本語ラップの界隈ではクラシック（古典と言えるほどの名曲中の名曲）として知られている曲だ。サビはなく、ひたすらループするバックトラックの上に、「証言する」という建て付けでラッパーのマイクリレーが乗る、ハードコア（硬派）な形式の曲。参加しているのは当時のスター級ばかりだ。

よく聞いとけ　俺らコケにした奴　
今時計が処刑の時刻を指す
証言 – Lamp Eye feat Zeebra etcから引用

　Zeebraさんは証言４番として４番目に登場。HIPHOPを金儲けの道具にする連中に鋭い批判を浴びせる歌詞で、比喩的に「処刑」すると言っている。「公開処刑」にも繋がる、視覚的なイメージを喚起させてくれる名バースだ。
　口ずさんでみるとわかるが、響きが小気味良い。「とけ」「俺」「コケ」「時計」「処刑」および「奴」「指す」で細かく押韻しており、Zeebraさんらしいリズミカルなパンチラインだ。

7. Parteechecka

　1995年のソロデビューアルバム「THE RHYME ANIMAL」収録のパーティーチューンから。90年代らしいどこかリラックスしたノリと、クラブ遊びを指南した面白い歌詞で、今でも人気の高い曲だ。

金払ったんならば払っただけ
遊んでかなきゃお前の負け
Parteechecka – Zeebraより引用

なんというか、真理だ。

8. I’m Still No.1

　同じくソロデビューアルバム収録曲。HIPHOPでは定番の自分のカッコよさ、強さ、凄さをアピールする「セルフボースティング」と呼ばれるジャンルの曲だ。

カッコだけのモデルガンと
凄まじい破壊力の爆弾との銃撃戦
I’m still No.1 – Zeebraより引用

　「自分の方が何倍も凄い」ということを、武器に例えてこれ以上なく簡潔に言い表しているスカッとするラインだ。他にもボクシングやバスケを引き合いに出した爽快な歌詞で構成され、完成度の高い曲。

9. Baby girl

　2002年のシングル曲。女性ボーカルと掛け合いをするサビで、耳馴染みはとてもメロウだ。10代の女の子との真剣交際について歌っている曲からこんなフレーズ。

俺に必要なのはどんなハードな障害も共に乗り越えるパートナー

かき回すだけのマドラーじゃなく一生聞き飽きない人生のサントラ
Baby girl – Zeebraより引用

　信じられないほど的確に恋愛の終わりと、次に進みたい理由を宣言しているフレーズだ。ちなみに後年、現在の妻・美和さんへのプロポーズ曲「Perfect Queen」では「君は最高のパートナー　俺の人生のサントラ」とこの曲へ自らアンサー（返答）している。

10. Neva Enuff

　2002年の異色作。北野武監督映画「BROTHER」にインスパイアされた曲ということで、同作出演の俳優・真木蔵人さんがAKTIONと名乗ってラップで参加。真木さんの飛ばし気味のスタイルも話題になった曲だが、Zeebraさんのリリックも冴えている。

つまんねぇそんな人生生きてぇか

ダイナミックにビッグに死にてぇか
Neva Enuff – Zeebra feat. Aktionから引用

　ゴージャスなバックトラックに、「日本人も世界で戦うぞ」というメッセージを載せた曲。最後に「人生賭けて何かしてみろ」と言うことで、わかりやすい言い方で二者択一を提示しているパンチライン。人生迷った時に頭の中で聞こえてきそうな一節だ。

ラップ界の大御所として一般にも知名度の高いZeebraさん。改めてその楽曲に耳を傾けてみると、圧倒的なリズム感とラップテクニック、わかりやすく刺激的なメッセージ性に耳を奪われる。デビュー以来、長いキャリアの中でグループ活動や他のジャンルのミュージシャンとのコラボレーションなども重ねており、名曲と言える作品もまだまだあるだろう。皆さんも自分だけのパンチラインを見つけるべく、色々とDIGって（掘り上げて）みてください。

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